依り神
古代から続く自然信仰は、日本人の心の奥深くに、今もなお静かに刻まれているように思います。
私は、宮崎を祖に持ち、奈良・吉野で林業に携わってきた家系に生まれました。けれどこれまで、その出自に向き合い、それを作品として形にすることはできずにいました。人生の折り返し地点を過ぎ、残せるものに限りが見えはじめた今、あらためて自分の根源にあるものを見つめ直し、形にして残したいと思うようになりました。
長野県・諏訪地域での滞在制作を通して出会ったのが、この地に古くから伝わる土着神「ミシャグジ」です。縄文時代にまで遡るとも言われるこの信仰には、意味のはっきりとしない神事や風習が今もなお息づいています。その姿に、幼い頃、祖父母から聞いた、よくわからない俗信や言い伝えが重なって見えました。知らず知らずのうちに受け継いでいる、言葉にならない記憶や感覚。それらの中にこそ、土地と人との関係の本質が潜んでいるように思えてなりません。
今回の作品では、日本神話が記紀に記される以前の時代から、人々の営みの痕跡が残る地で、御神木や、神域とされる場所に生える木々を撮影の対象としました。祈りや願いは、直接的に木々に刻まれるものではありません。しかし、長い時間の中で蓄積されてきた想いや気配は、確かにそこにあると感じています。私は、そうした不可視の祈りの痕跡や気配を、今回の作品の中にほんのわずかでも映し出すことができればと願っています。
2025年7月 倉谷拓朴
Nayuta「依り神」展ステートメント
使用している額について
「依り神」シリーズでは、アンティーク額やヴィンテージ額、古材を用いた額を使用しています。これらのフレームは、かつて別の作品を収めていたり、長い年月の中で人々に使われ、見つめられてきたものです。そうした時間や記憶、そこに宿る想いもまた、本作品の一部として取り込むことができるのではないかという考えのもとで使用しています。