依り人
私は新潟県で開催されている「越後妻有アートトリエンナーレ」に2003年から2015年まで参加していた。2005年から10年間、新潟県十日町市名ケ山集落にある築およそ100年の古民家を改修して中に作品を設置し、「死」を意識させるポートレイトを撮る写真館として、作品を展開してきた。
古民家の改修には屋内の掃除から関わり、茅葺屋根の葺き替えや補修作業にも、職人や集落の人たちと共に何度も参加した。この地域は例年3メートルもの雪が積もる豪雪地帯であり、屋根や建物の雪掘りも毎年数回加わり、集落の祭りや行事にも、可能な限り参加した。
この地域の大雨や大雪のニュースを見るたび、私は作品のある建物や集落のことを案じていた。ほぼ毎週のようにこの集落まで通っていた時期もあり、これまでに100回近く関越道を往復したのではないかと思う。
最近では、雪の多い日には除雪車が道路の雪を取り除き、町へ抜けるトンネルも整備されているため、冬季の往来は以前ほど困難ではない。しかし私は、折に触れてこの地域がかつて抱えていた厳しい暮らしについて話を聞いてきた。そこに生きる人々の力強さは、私の想像を超えている。ただ、それは私が知らないだけで、かつての日本には各地に存在していた営みだったのかもしれない。
「越後妻有アートトリエンナーレ」への最後の参加となった年、私は一年でもっとも雪深い時期に、この集落の人々のポートレイトを撮影した。3メートル、あるいは4メートルにもなる雪壁を背景にして。
ポートレイトは、被写体を写すと同時に、撮影者自身を映す鏡でもある。
《依り人》というこの作品は、集落の人々の肖像であると同時に、撮影者である私自身の遺影なのかもしれない。
「越後妻有アートトリエンナーレ2015」での撮影風景
当時6歳の息子が撮影
「越後妻有アートトリエンナーレ2015」での撮影風景
当時6歳の息子が撮影